不妊の原因になるといわれている「卵管障害」を知っていますか。実際に不妊でお悩みの人の多くに卵管障害が見られるといわれています。卵管障害になっている原因を突き止めるのはもちろん、適切な治療を選択する必要があります。意外と知らない卵管障害とはどのようなものなのか、わかりやすく紹介していきます。
卵管障害とは?原因となる疾患
女性の生殖器にある卵管とは、受精した卵子を卵巣から運ぶ役割を担っています。受精卵として卵管を通り、子宮へと移動する流れです。卵管は個人差があり平均10㎝程度になり、子宮の左右にあります。
卵管障害は、卵管が閉寒する、卵管に癒着が起きている状態です。精子と卵子が受精できたとしても、そこから卵子が移動できないため、子宮外妊娠になってしまうことも考えられます。不妊症で悩む女性の3割にあたる、よくある疾患でもあるのです。
クラミジア感染症
卵管障害は、感染症による炎症が原因となっていることがあります。性感染症のなかでも最も多いのが「クラミジア」です。クラミジアトラコマティスと呼ばれる病原体が原因となり、卵管に炎症がおきています。周辺にも影響してしまうことがあり、子宮頸管や子宮内膜の炎症の原因にもなると考えられています。
子宮内膜症
健康な女性でも珍しくないのが子宮内膜症です。女性の10人に1人の割合で起こる疾患になり、子宮内膜が子宮以外の膀胱や卵巣で増えてしまいます。
子宮内膜症は詳しい原因がわかっておらず、生理が重くなり日常生活に支障をきたすことで、気付くケースもあります。
昔よりも初潮が早くなっていることや、栄養過多の食生活が関係しているのでは?と考えられています。生理の回数が多くなると症状が悪化するため、女性1人あたりの出産する子どもの人数が減っているのも関係しているのではないかと言われています。
過去の手術既往歴
卵管障害は、過去に開腹手術を行ったことがあると癒着や詰まりなどが起こりやすくなるとも言われています。例えば子宮外妊娠を経験している女性や、帝王切開での出産経験が原因となり、卵管障害になることも。一見関係のない盲腸でも可能性が考えられます。
卵管障害がおきるとどんな症状がでる?
卵管障害がおきてしまった場合、主にどのような症状が出るのでしょうか。
精子が卵子までたどり着かず受精ができなくなり不妊に
卵管は排卵した卵を吸い上げ、育てて子宮に運ぶ重要な役割を担っています。卵管に詰まりがある、傷がついていると不妊の原因になってしまいます。癒着している状態では、精子と卵子の受精率が低下しますし、着床しない可能性を高めてしまいます。
下腹部痛や発熱、おりものの変化などの自覚症状が出る
卵管障害の場合、毎回ではないものの下腹部痛が起き、おりものの変化を感じることがあります。色付きのおりものや匂いが強くなったなと感じたら、その原因が卵管障害だったなんてケースも少なくありません。
ほとんどの女性に自覚症状がないので、不妊治療を始めてみてその原因が卵管にあったと気付く人も少なくないようです。
片方のみの場合は自然妊娠の可能性がある
卵管障害も、両方ではなく片方の卵管のみの場合は自然妊娠をする可能性も考えられます。卵管は左右両方に問題が起きているケースもあれば、片方のみに起きているケースもあるので、卵管障害でも個人差があります。
左の卵管が詰まっている場合、右の卵管が卵子をピックアップできるのは25%前後だといわれています。卵管がどちらかが機能していれば、妊娠できないわけではありません。
卵管障害はどんな治療があるの?検査内容や方法
卵管障害を調べるための検査方法や、治療法を説明します。
子宮卵管造影検査で卵管の癒着を調べる
卵管障害の検査方法としては、主に子宮卵管造影検査が主流です。レントゲンで造影剤の影をみながら確認する方法になるので、必ずしも精度が高いとはいえません。
子宮や卵巣などに卵管が正常に通っているかを確認するものになります。造影剤の影響もあり、卵管障害が改善することもありますし、妊娠しやすくなる期間ともいわれています。
軽度であれば薬物療法や抗生物質など
卵管の癒着が軽いものであれば、基本的には薬物療法を選択します。クラミジア感染の炎症が卵管障害になっているときは抗生物質を飲みながら、様子を見ていきます。
薬物療法から試していき、それでも症状が改善されないときは、別の治療法を相談しながら決めます。
重度の癒着や妊娠を急いでいるときは体外受精の選択も
卵管障害が進行しており癒着が進んでしまっている場合は、体外受精を行う必要も出てきます。女性には妊娠しやすい期間がありますし、できるだけ早く子どもを授かりたい人もいると思います。卵管障害の進行度を見て、体外受精の選択が出てくることも頭に入れておきましょう。
卵管障害以外に考えられる女性側・男性側の不妊の原因
不妊は、卵管障害以外にもさまざまな要因によって起こります。もちろん、女性側だけの問題ではなく、男性側に不妊の原因が隠れていることも少なくありません。
具体的にどんな原因が考えられるのでしょうか。
女性は排卵因子や免疫因子や子宮因子など先天的なものも
女性側で考えられる不妊の原因には、主に排卵因子や免疫因子、子宮因子があります。例えば月経不順で排卵が正常に行われていない、甲状腺でホルモンバランスが乱れてしまうことも。
免疫因子は、異物の侵入を防ぐ抗体のなかには、精子を攻撃してしまうものもあり、精子の元気がなくなり、卵子に到達しなくなってしまいます。子宮の先天的な要因で妊娠しないなど、さまざまなものが重なり不妊につながっていることもあります。
男性は造精機能障害や精路通過障害や加齢
男性側で考えられる不妊の原因は、精子の数が少なく運動性に問題がある造精機能障害や、精子の出口がなくなる精路通過障害などが考えられます。また、加齢とともに妊娠力が低下するのは男性も同様です。35歳前後から精子の質が低下するといわれています。
不妊の原因は女性のみだけでなく男性もほぼ50%
不妊というと女性側をイメージされがちですが、男性側に原因が隠れていることもあります。その割合はほぼ50%ともいわれており、お互いが協力しあい妊娠するための準備をしていくことが大切です。
(https://www.jsog.or.jp/modules/diseases/index.php?content_id=15)
原因がわからないときはタイミング法や排卵誘発法、人工授精も視野に入れる
不妊の明確な原因がわからないときは、女性の排卵を促しながら受精しやすいようにサポートしていきます。不妊治療の多くはタイミング法や排卵誘発法を使い様子を見ていきます。それでも妊娠するのが難しいときは、人工授精や体外受精も視野に入れましょう。
まとめ
排卵障害は珍しいものではないからこそ、妊娠しづらいな…と感じたら一度不妊検査を受けてみて原因をはっきりとさせるのをおすすめします。女性側だけでなく男性側にも不妊の原因が考えられます。
当院は体外受精などの高度生殖医療ができる医療機関です。確かな実績数もあるからこそ、安心してうすだレディースクリニックにご相談くださいね。
監修:院長 医学博士 臼田 三郎