排卵障害は、排卵に異常がおきてしまい卵が育たず、月経の回数が不定期になってしまうことをいいます。なかには毎月の月経が決まった周期でこなくなってしまい、悩んでいる女性もいるのではないでしょうか。
どうして排卵障害が起きるのか?その原因や排卵を誘発させるための治療法などをまとめてみました。排卵障害との向き合い方も含め、早期治療を検討してみてくださいね。
排卵障害の原因は?
排卵障害は、排卵までの過程に何かしらの問題が起きています。
女性の体はとてもデリケートなので、さまざまな原因で排卵障害を起こしてしまう可能性があります。まずは、排卵障害の原因として多い病気から見ていきましょう。
主に考えられるのは以下の3種類です。
・中枢性排卵障害
・PCOS(多嚢胞性卵巣症候群)
・高プロラクチン血症
それぞれ詳しく説明します。
中枢性排卵障害
視床下部の働きにブレーキがかかり、排卵障害がおきている状態です。脳の下垂体前葉から分泌されているホルモン「FSH」や黄体形成ホルモンの「LH」の分泌が低下して起こります。主な原因は強いストレスや無理なダイエットによる体重の減少などが考えられ、月経周期の乱れによる無月経などの症状がでてきます。
PCOS(多嚢胞性卵巣症候群)
生殖年齢の女性のうち5%前後に見られるのがPCOSです。黄体形成ホルモンLHが過剰に分泌されることで、男性ホルモンの分泌を促してしまいます。卵巣の内部に複数の卵胞ができている状態になり、超音波検査で、2mm〜9mm前後の卵胞が10個以上見つかることも。
無月経や稀発月経のような月経異常や、多毛やニキビなど男性ホルモンならではの症状が出てしまう人もいます。
高プロラクチン血症
脳下垂体から分泌される「プロラクチン」と呼ばれる刺激ホルモンの値が高くなります。乳汁の分泌や排卵障害などが起こり、月経不順の原因になります。本来であれば出産や授乳中に多く分泌されるホルモンになりますが、関係のないときに数値が高くなると高プロラクチン血症と言います。女性に限らず、男性や子供でも発症します。また、脳下垂体にある腫瘍が原因となっている場合は手術が必要です。
全身の状態に排卵障害の原因が考えられることも
排卵障害のなかには、全身の状態に原因があることも考えられます。
主な原因は以下の3種類です。
・肥満ややせ型
・過度なストレス
・冷えや便秘
一見関係ないと思いがちですが、排卵障害と深い関りがあることも。
環境の変化やストレスを感じやすくなった女性は注意しましょう。
それぞれの原因を詳しくお話しします。
肥満ややせ型
太りすぎていてもやせ型(痩せすぎ)でも排卵障害のリスクが考えられます。
肥満とはBMI25以上が対象の人をさします。肥満の半数以上で、無月経や過少月経などの月経異常が起こるといわれています。脂肪細胞が多いことで女性ホルモンの分泌が過剰になり、ホルモンバランスが乱れる原因に。また、女性ホルモンのなかに男性ホルモンが微量に含まれており、肥満だとその割合も多くなり月経異常となります。
やせ型とはBMI18.5未満の人をさします。脂肪が少ないので女性ホルモンが分泌されにくくなってしまいます。女性ホルモンのエストロゲンは脂肪細胞から生まれているため、分泌しづらくなってしまうのが原因。また、ダイエットで極端に食事の量を減らし、栄養バランスが悪くなってしまうと排卵障害の可能性を高めてしまうといわれています。
過度なストレス
女性の体はとてもデリケートなので、悩み事やストレスが原因となり排卵障害になることもあります。脳から分泌されるホルモンがうまく出せなくなり、なかには月経が止まってしまうことも。ストレスの度合いは数値でわかるものではありません。環境の変化が大きなストレスとなることも考えられます。排卵障害に悩んでいる人は、過度なストレスを感じるような出来事がなかったか、今一度見直すようにしてみましょう。
冷えや便秘
冷えや便秘などの不調は、血流が滑らかに流れていないために起きている場合があります。卵巣まで血液がたっぷりと送られていない状態だと、脳から卵巣に指示を送れなくなってしまいます。冷たいものの飲みすぎや、シャワーだけでなく体を温める生活習慣も見直していきましょう。
排卵を誘発させる治療法とは
日常生活を見直していくのと同時に、排卵を誘発させる治療法を行います。
排卵障害になった原因によっても治療法は変わります。
・クロミッドなどの内服薬を使用する
・HMG製剤などの注射薬を使う
・漢方薬を使った方法
それぞれの違いを説明していきます。
クロミフェン(クロミッド)などの内服薬を使用する
中枢性排卵障害の治療などに使われる飲み薬です。排卵障害でも軽症のときに使い反応が見られれば14日後に排卵が起こる仕組みになっています。副作用が少なく、手ごろな価格で治療ができ、3か月〜6か月試しながら様子を見ていきます。
HMG製剤などの注射薬を使う
LH、FSHの代用品として注射を使い、直接卵巣を刺激する治療法です。視床下部の症状が重く治療が難しいときに使います。卵胞刺激ホルモン・黄体化ホルモンを性周期に合わせ毎日注射し発育を促していきます。
漢方薬を使った方法
排卵障害によっては漢方薬との併用を勧められることもあります。しかし漢方薬は、副作用が起きることもありますので、病院に相談したうえで適切に処方してもらうようにしましょう。
排卵障害に悩んでいる人に月経不順が多い理由
排卵障害に悩んでいる人の多くが、毎月の月経不順で悩んでいます。
どうして排卵障害と月経が関係しているのか、その理由を紹介しましょう。
月経があるから排卵が起きているとは限らない
女性の子宮は一定のサイクルのあとに排卵し、受精しないとき子宮内膜が剥がれ月経が起こります。この月経のなかには排卵を伴わないものもあり「無月経排卵」といいます。日常生活に支障をきたすような重篤な症状はないものの、妊娠を希望している女性にとっては不妊のリスクが考えられます。
過短月経の場合は排卵障害の可能性が高くなる
月経が2日以内で終わるような場合を、過短月経といいます。女性ホルモンが少なく、子宮内膜が厚くなりません。月経が定期的に来ていても、無排卵月経になっているケースも多いため、ホルモン療法等が必要になります。
排卵障害が不妊の原因になることも
受精するためには、卵巣から排出された卵子が、卵管膨大部にて精子と出会う必要があります。排卵がないということは卵子が出てこないため受精できません。
生活リズムを整え自然排卵を促す(運動や食事療法、減量など
排卵障害を改善するためにも、十分な睡眠や適度な運動で適正体重を維持することが大切です。食事バランスも考え、ストレスとも上手に付き合っていきましょう。
排卵障害は早めの治療が大切
排卵障害は早めの治療が必要です。不調をそのままにしていると卵巣機能の衰えにもつながり、不妊だけでなく、早期閉経や骨粗鬆症などのリスクを高めてしまいます。
まとめ
排卵障害に、あなた自身が気付いていないこともあるかもしれません。生活習慣の乱れやストレスが要因となり、月経異常を起こす可能性も考えられます。
日常生活の見直しとともに、病院で適切な治療を受けていきましょう。
当院では、麻酔を使った痛みのない採卵はもちろん、経験豊富な医師やスタッフがしっかりとサポートいたします。患者さん目線に合わせた丁寧な説明のもと、希望を聞き治療方針を決めていきましょう。不妊でお悩みの方はうすだレディースクリニックにお気軽にご相談ください。
監修:院長 医学博士 臼田 三郎