不妊治療で体外受精を考えている人もいるのではないでしょうか。なかには勇気が出ずにその一歩が踏み出せない人もいるかもしれません。また、そもそも体外受精とは誰でもできる治療法なのか、わからないこともあるのではないでしょうか。
そんなあなたに、体外受精について詳しい手順や種類を紹介します。体外受精を希望する人も増え、珍しい治療法ではなくなっているからこそ知っておきましょう。
体外受精とは?対象になる人
体外受精について、人工的なイメージを持っている人もいるかもしれません。妊娠するための受精を体外で行うだけで、基本的な部分は自然妊娠と変わりません。体外受精は女性の膣に針を刺し卵子を取り出したあと、精子と受精させてタイミングを見て子宮に戻します。
他の不妊治療よりも妊娠の可能性が高いといわれています。
以下に該当している人は体外受精の対象です。
・卵管因子
・免疫性不妊
・男性因子
それぞれわかりやすく説明します。
卵管因子
卵巣と子宮を結ぶ卵管の機能が損なわれ不妊になっているケースです。個人差があり卵管が狭くなっている人もいれば、卵管が閉鎖している場合もあります。卵管の内側だけに問題がある場合は、手術を受けて自然妊娠の可能性を高める選択肢も。周囲と癒着しているなど手術が難しいときは、体外受精を選択します。
免疫性不妊
女性の体のなかに、精子の運動機能を損なう抗体ができているケースです。抗精子抗体は数値によっても妊娠できる可能性が変わりますが、体外受精のほうが確率も高くなります。また、受精卵の着床や発育を阻害する抗体もありますし、なかには男女ともに受精できない抗体もあります。検査をしたうえで、どんな抗体があるかを確認し治療します。
体外受精の詳しい手順とは
体外受精の段階に合わせた手順で進めていきます。
具体的にどのようなタイミングで進んでいくのか、わかりやすく解説していきます。
大きく分けて3段階で進めていきます。
・卵巣刺激で排卵を促す方法(クロミッドやロングショート法など)
・採卵→受精→胚培養→胚移植の手順で進める
・レーザーアシステッドハッチング
それぞれ詳しく説明していきます。
卵巣刺激で排卵を促す方法(クロミッドやロングショート法など)
妊娠の可能性を高めるために、最初に行う方法です。ホルモン療法で飲み薬や注射を行い、調整していきます。卵巣の状態はもちろん、どのような希望で体外受精を進めたいのか確認したうえで治療を進めます。
経済的負担が少ない「クロミッド法自然周期法」もありますし、採卵できる卵子の数を多くしたいのであれば「ロングショート法」の選択も考えられます。ただし、副作用が弱いものから強いものがあるため、日常生活への影響も含めて決めていくようにしましょう。
採卵→受精→胚培養→胚移植の手順で進める
受精した卵子を受精させたあと、体外受精をします。受精法によって採取された受精卵は、専用の培養液のなかで細胞分裂を起こし”胚”になります。
受精を確認するのに2日〜3日程度時間がかかりますので(※個人差あり)、培養が十分に進んだものを子宮内に移植します。
昔から行われている「分割期胚移植」や、着床寸前の胚盤胞に移植する「胚盤胞移植」、両方を同じ周期で連続して行う「二段階移植」など種類があります。
レーザーアシステッドハッチング
受精に大切な着床率を高める技術に「レーザーアシステッドハッチング」と呼ばれるものがあります。体外受精で着床しなかった原因のなかには、透明帯の厚さや硬さが関係している場合も考えられます。
レーザーアシステッドハッチングは、透明帯を薄くし孵化を促す技術のことを言います。なかでも最も胚を傷つける心配が少ないのがレーザー式のものになり、多くの病院で採用されています。
体外受精のメリット
体外受精にはどんなメリットがあるのか、解説します。
タイミング法や人工授精よりも受精しやすい
不妊治療といえば、体外受精の他にタイミング法や人工授精があります。なかでも体外受精は受精しやすいことでも知られています。体外受精を希望する女性の方には、高齢出産でできるだけ早く妊娠したいと考えている人もいるのではないでしょうか。
タイミングを見て受精させるよりも、効率を重視できるのも体外受精ならではです。
卵子にかかる負担が少なく傷つきにくい
体外受精は精子が自ら卵子のなかに入るため、卵子にかかる負担も少なくなり傷がつきにくい良さもあります。そのため、安心して任せられるのも大きなメリットといえます。
卵巣に問題があってもできる(閉塞している場合など)
卵巣に問題を抱えている場合も、体外受精が受けられるのも特徴。例えば卵管が癒着していると受精の可能性が下がってしまいます。また、抗精子抗体を持っていても不妊治療ができるのも、体外受精のメリットです。自然妊娠は難しいと諦めている女性にとっても、体外受精であれば妊娠の可能性が高くなるのです。
体外受精のデメリット
次に体外受精にはどんなデメリットがあるのか、解説します。
通院の回数が増える
体外受精は、通院回数が負担になってしまいます。誘発剤を使用して採卵を行いますが、治療に痛みを伴うため麻酔を使います。そのため、急な休みや有給がとりやすい環境など、職場によっても通い続けられるかどうかが変わってきます。
受精しても必ず着床するとは限らない
1回で受精するとは限りませんし、何度も通わなくてはいけないため、通院の回数の多さが負担になってしまうことがあります。回数が増えれば、その分費用も高額になるため、負担が増えてしまうデメリットも頭に入れておかなくてはいけません。
仕事をしているとスケジュール管理が難しい
体外受精はタイミングが重要なので、仕事をしているとスケジュール管理が難しい問題もあります。急な休みを取る必要が出てきても上司には相談しにくい女性も多いのではないでしょうか。仕事を見直すなどスケジュール管理のしやすい環境を整えましょう。
体外受精の妊娠率
2022年4月から、体外受精は保険が適用になりました。以前は、不妊の原因を明確にする検査など限られたものしか保険が使えない問題がありました。今後は医療機関の窓口で支払う金額は、原則3割負担になります。費用負担も少なくなったからこそ、前向きに体外受精を考える人も増えると思います。
ちなみに体外受精でも、必ず妊娠するとは限りません。
年代によってもパーセンテージが変わってきます。
・20代は約40%
・30代前半は約35%
・30代後半は約25%
・40代以降は5%~10%
と年齢を重ねるごとに難しくなっていることもわかります。体外受精を考えている人は、早めの治療がおすすめです。
まとめ
体外受精が保険適用になった今、以前よりも費用負担が少なくなりました。年代によっても妊娠率が変わるからこそ早めの治療が大切です。あなたの希望を考慮しながら体外受精を進めていきますので、なんでもお気軽にご相談ください。
当院は、体外受精における高度生殖医療を行っているクリニックとして、不妊治療のサポートをしております。患者さん目線に合わせた細かやかな説明を心掛け、ご理解いただいたうえで体外受精を実施しております。体外受精についての不安やお悩みは、うすだレディースクリニックにご相談ください。
監修:院長 医学博士 臼田 三郎